【詩】ねこやろうの話

  ねこやろうの話
 
キタからキタ、キタねぇねこ
北から来た、汚ねぇねこ
 
真っ白に生まれたけど
シャワーが嫌いな
うすぎたない猫で
けんかを売り買いするわりに
顔の肉を削ぎ落とされて帰ってきて
むだな金に羽がはえ
むだに生まれ
人の手で去勢され
むだに生き
むだに死に
あっけなく煙と骨になった
わたしたちの胸に
ねこそのものを愛する心を生みつけて
このむだが死ぬほど愛しい
ほしい
 
横になっていた私が
目をあけると
いつのまにか
視界いっぱいに
ねこが近寄っていた日
 
ソツのあるありすぎるねこ
冬、足の上に寝られると
重くて
邪魔
 
このむだが私の胸によみがえると
丸いからだのわりには
老いてこけた頬を思いだす
私を見ると、細めた目で
ゆっくりそっぽを向く